早番の日の朝5時半。目覚ましを止めたまま、天井をぼんやり見ている。起きなければと分かっているのに、体が布団に沈んだまま動かない。やっと園に着いても、子どもたちの「せんせい」という声がどこか遠くに聞こえる。連絡帳を開いても、いつもなら自然に出てくる言葉が一行も浮かばない。
「もう限界かもしれない」と思いながら、同時に「みんな同じくらい大変なのに」と自分に言い聞かせて、今日も出勤した人は少なくありません。保育士は、子どもの命を預かる仕事だからこそ、限界という言葉を口にすることにさえ、ためらいを感じやすいのです。
この記事では、「もう限界」という感覚を、心・体・行動・人間関係の4つの面から具体的なサインとして整理しました。そのうえで、今日のうちにできる3つのことを紹介します。辞めるかどうかを決めるのは、そのあとで構いません。まずは、今の自分がどのくらいすり減っているのかを確かめるところから始めます。
この記事でわかること
- 「もう限界」のときに、心・体・行動・人間関係に出やすいサイン
- 一時的な疲れと、休むべき限界の状態を見分ける目安
- 受診・休む連絡・相談を、今日のうちに進める3つの行動
- 限界のときに大きな決断を急がないための考え方と、公的な相談窓口
結論
保育士の仕事を辞めたい、もう限界だと感じているときは、辞めるかどうかを考える前に、心と体の状態を確かめることを最優先にしてください。眠れない、食べられない、出勤前に涙や吐き気が出る、ミスや物忘れが増える、特定の人と話すのが怖いといったサインが2週間以上続いているなら、気持ちの持ち方で乗り切れる段階を過ぎています。今日できることは、①今の状態を書き出す、②休む連絡と受診の予約をする、③信頼できる一人か相談窓口に話す、の3つです。「消えてしまいたい」と感じるときは、今すぐ公的な相談窓口に電話してください。
01先に伝えたいこと:今すぐ助けを求めてよい状態
要点:「消えてしまいたい」「いなくなりたい」という考えが浮かぶとき、または体調のせいで保育中の安全が保てないと感じるときは、辞めるか続けるかを考える前に、今日のうちに誰かに助けを求めてください。
この記事を開いた人の中には、限界を通り越して、ふとした瞬間に「このまま消えてしまえたら楽なのに」と考えてしまう人もいるかもしれません。それは心が弱いからではなく、心が出している強い救難信号です。一人で抱える時間を少しでも短くするために、電話やSNSで話を聞いてくれる公的な窓口があります。
図1
| 窓口 | 連絡先 | 受付時間 |
|---|---|---|
| こころの耳電話相談 | 0120-565-455[1] | 平日17時〜22時、土日10時〜16時(祝日・振替休日・年末年始は休止) |
| こころの耳SNS相談 | LINEで相談[2] | 平日17時〜22時(受付21時30分まで)、土日10時〜16時(受付15時30分まで) |
| こころの耳メール相談 | 専用フォーム[3] | 24時間受付。受理から1週間以内に回答 |
| いのちの電話 | 0120-783-556[4] | 毎日16時〜21時(毎月10日は8時〜翌日8時) |
| よりそいホットライン | 0120-279-338[4] | 24時間・無料(福島県からは0120-279-226) |
窓口に電話するのに、整理された説明や立派な理由はいりません。「仕事のことでしんどくて」の一言から話し始めて大丈夫です。時間帯によってはつながりにくいこともあるので、一度でつながらなくても、少し時間を置いてかけ直してください。
保育中の安全が心配なときは、交代をお願いしてよい
午睡チェックの記入が抜ける、散歩の前後の人数確認があやふやになる、子どもの声に反応するまで時間がかかる。こうした状態は、あなたにとっても子どもにとっても危険信号です。主任や園長に「今日は体調が悪く、保育に集中できていません」と伝えて、保育から外れる時間をもらうことは、責任を放り出すことではありません。むしろ、子どもの安全を守るためのまっとうな判断です。
02限界のサインを、心・体・行動・人間関係の4つの面から確かめる
要点:限界のサインは、心・体・行動・人間関係の4つの面に出ます。一つひとつは小さな変化でも、2つ以上の面に同時に出ているときは、疲れがかなり深くたまっていると考えてください。
図2
心
楽しかった製作や手遊びに何も感じない、理由なく涙が出る、自分を責める言葉が止まらない
気分の問題と思い込みやすい
体
寝つけない、夜中や早朝に目が覚める、食欲がない、出勤前に頭痛や吐き気が強くなる
休日に少し軽くなるなら職場の負担のサイン
行動
連絡帳の手が止まる、記入漏れやうっかりミスが続く、帰宅後に座り込んで動けない
注意力ではなく疲労の問題
人間関係
特定の人の声で体がこわばる、休憩室に入れない、家族や友人への返信もできない
性格の問題と思い込みやすい
心に出るサイン
- 以前は楽しかった製作や手遊びに、何も感じなくなった
- 子どもの泣き声や大きな声に、自分でも驚くほどいらだつ
- 「この仕事に向いていない」と一日に何度も考える
- 日曜の昼過ぎから、月曜のことで頭がいっぱいになる
- 理由もなく涙が出る、あるいは逆に何も感じない
特に気にかけてほしいのは、怒りや悲しみよりも「何も感じない」状態です。かわいいと思っていた子どもの笑顔に心が動かなくなったとき、それは冷たい人になったのではなく、心が残りのエネルギーを節約しようとしている合図です。
体に出るサイン
- 寝つけない、夜中に何度も目が覚める、早朝に目が覚めてそのまま眠れない
- 食欲がない、または夜遅くに食べすぎてしまう
- 頭痛、腹痛、めまい、動悸が、出勤前になると強くなる
- 休日に長く寝ても、疲れが抜けない
- 風邪をひきやすく、治るまでに時間がかかる
保育士は体を使う仕事なので、多少の疲れは当たり前だと考えがちです。けれど、出勤前に症状が強くなり、休日になると少し軽くなるという波がはっきりあるなら、体が職場の負担そのものに反応していると考えられます。
行動に出るサイン
- 連絡帳やおたよりの文章が書けず、手が止まる時間が増えた
- 午睡チェックの記入漏れや、持ち物の確認ミスが続いている
- 帰宅すると、着替えもせずにしばらく座り込んでしまう
- お酒や甘いもの、スマートフォンを見る時間が明らかに増えた
- 夜になると求人サイトを開いては閉じるのを、毎晩くり返している
ミスが増えると、多くの人は「もっと気をつけなければ」と自分を締めつけます。けれど、集中力や記憶力が落ちるのは、疲れがたまったときによく見られる変化です。注意力を責めるより先に、疲れの量を減らすことを考えてください。
人間関係に出るサイン
- 特定の先輩や主任の足音や声を聞くだけで、体がこわばる
- 休憩室に入るのが怖く、昼食を車の中や更衣室で済ませている
- 同僚の雑談に入れなくなり、必要な確認さえ聞けない
- 家族や友人からの連絡に、返信する気力がわかない
- 保護者の何気ない一言を、何日も頭の中でくり返してしまう
人間関係のサインは、本人が「自分の性格の問題」と思い込みやすいのが特徴です。職場で萎縮していると、質問ができなくなり、確認が遅れ、さらに注意されるという悪循環に入りがちです。受けている言動がパワーハラスメントに当たるかもしれないと感じるなら、保育士のパワハラの相談先もあわせて確認してください。
03「ただの疲れ」と「限界」の境目はどこにあるか
要点:目安は、休めば回復するか、症状がどのくらい続いているか、仕事以外の生活にまで影響が出ているか、の3点です。右側の状態がいくつも重なるほど、休む必要性は高くなります。
図3
| 確かめること | 一時的な疲れ | 限界に近い状態 |
|---|---|---|
| 休日の過ごし方 | 一日ゆっくり休むと、気力が戻ってくる | 休日も寝込むか、仕事のことが頭から離れない |
| 続いている期間 | 行事の前後など、数日から1週間ほど | 2週間以上、波はあっても抜けない |
| 眠り | 疲れてぐっすり眠れる | 寝つけない、夜中や早朝に目が覚める |
| 仕事以外への影響 | 趣味や友人との予定は楽しめる | 好きだったことにも興味がわかない |
| 子どもとの関わり | 疲れていても、かわいいと感じる瞬間がある | 何も感じない、いらだちが抑えられない |
| 自分にかける言葉 | 「今週は大変だった」 | 「私が全部悪い」「いないほうがいい」 |
右の列に3つ以上当てはまるなら、限界に近い状態と考えて、休むことと受診を具体的に検討してください。最後の行のように「いないほうがいい」という考えが浮かぶときは、数に関係なく、最初の見出しで紹介した窓口に今日つながってください。
行事前の忙しさと見分けにくいとき
運動会や発表会の前は、誰でも疲れます。持ち帰りの製作が増え、帰りが遅くなり、睡眠が削られるのは珍しいことではありません。見分けるときの手がかりは、行事が終わったあとです。行事が終わって2週間たっても眠りや食欲が戻らない、むしろ悪くなっているという場合は、行事の疲れではなく、積み重なった消耗が表に出てきたと考えたほうが安全です。
ストレスチェックの結果も手がかりになる
常時50人以上の労働者がいる事業場では、ストレスチェックを年1回実施する義務があります。受けるかどうかは本人が選べ、本人の同意なく結果が事業者に伝わることはなく、面接指導を申し出たことなどを理由に不利益な扱いをすることは禁止されています[5]。50人未満の事業場にも実施が義務づけられ、2028年4月1日に施行される予定です[6]。結果に「高ストレス」とあったなら、それは自分の感覚を裏づける材料になります。
04今日できる3つのこと
要点:今日やることは、①今の状態を書き出す、②休む連絡と受診の予約をする、③一人に話す、の3つだけです。辞める・辞めないの判断は、この3つのあとで十分に間に合います。
図4
今の状態を3行で書き出す
眠れた時間、食事の様子、出勤前の体の状態を手帳やスマートフォンのメモに書きます。受診や相談のときにそのまま使えます
休む連絡と受診の予約をする
明日以降を休むなら園に伝える文面を決め、かかりつけ医か心療内科に予約の電話を入れます
一人だけに話す
家族、友人、相談窓口のうち今日話せそうな相手を一人選び、「最近しんどい」とだけ伝えます
1. 今の状態を3行で書き出す
書く内容は、気持ちよりも事実を優先します。たとえば次のような書き方です。
- 例:寝つくまでに2時間。夜中に2回起きる。休日は昼まで起きられない
- 例:朝ごはんは食べられない。給食は半分残す。夜にお菓子を一袋食べる
- 例:出勤前に吐き気。園の駐車場で10分ほど車から降りられない
事実を書き出すと、自分の状態を少し離れた場所から見られるようになります。また、受診したときに医師へ伝える材料になり、緊張して言葉が出てこなくても、メモを見せれば伝わります。うまく書こうとしなくて構いません。箇条書きの3行で十分です。
2. 休む連絡と、受診の予約を入れる
休むときの連絡は、短くて構いません。迷惑をかける申し訳なさが強い人は、今日のクラスの予定を一言添えると、気持ちが少し軽くなります。
例:おはようございます。体調不良のため、本日はお休みをいただきたいです。ひまわり組の今日の予定は、連絡帳の確認と10時からの公園への散歩です。ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
年次有給休暇は、原則として働く人が指定した時季に与えられるもので[7]、取得したことを理由に不利益な扱いをすることは禁止されています[8]。当日の連絡方法や欠勤の扱いは園ごとに決まりがあるので、就業規則も確認しておきましょう。
受診先に迷ったら、かかりつけの内科でも構いません。眠れない、食欲がないという相談から始めて、必要に応じて心療内科や精神科を紹介してもらう方法もあります。専門の医療機関は予約が数週間先になることもあるため、迷っている段階でも先に電話だけ入れておくと安心です。受診するかどうかで迷っている人は、心療内科に行くべきか迷うときの目安も参考にしてください。
医師がまとまった休養が必要だと判断した場合、診断書をもとに園の休職制度を使えることがあります。休職の有無や期間、休んでいる間の収入の扱いは園によって違うため、就業規則と、加入している健康保険の窓口で確かめてください。詳しくは休職を考えるときの進め方にまとめています。
3. 一人だけに話す
話す相手は一人で十分です。全部を説明しようとせず、「最近しんどくて眠れていない」と伝えるだけで、抱えていたものの重さは変わります。職場の人に話しにくいなら、家族や学生時代の友人など、園の外の人を選ぶと気が楽です。
声に出して話す気力がないときは、文字で相談できる窓口もあります。こころの耳のメール相談は24時間受け付けていて、受理から1週間以内に返信が届きます[3]。休憩が取れない、残業代が出ないといった働く条件そのものの悩みは、労働条件相談「ほっとライン」(0120-811-610、平日17時〜22時、土日祝9時〜21時、無料・匿名可)で相談できます[9]。
05休む、続ける、辞めるを考える順番
要点:限界のときの判断は「休む」が先で、「辞める」はそのあとです。いったん回復してから考えたほうが、選択肢を広く見渡せて、後悔の少ない選び方ができます。
図5
今の自分に、安全に保育ができる体力と気力が残っているか
- 今日・明日を休む有給休暇や欠勤で、まず数日間は仕事から離れて眠る
- 受診して休養の必要性を聞くまとまった休養が必要かどうかを医師に判断してもらう
- 休職制度を確認する就業規則に休職の定めがあるか、期間と手続きを確かめる
- 働き方を調整する担当クラス、行事の役割、早番・遅番の回数を減らせないか相談する
- 環境を変える回復したあとで、異動・転職・別の職種を落ち着いて比べる
消耗しきっているときの頭は、選択肢を少なく見積もりがちです。「辞めるか、このまま我慢するか」の二択に見えてしまい、その間にある休む・減らす・移るといった道が目に入らなくなります。上の図の順番は、狭くなった視野を少しずつ広げるための順番でもあります。
辞めるとしても、休んでからで遅くない
期間の定めのない雇用であれば、退職の申入れから2週間がたつと雇用は終了します[10]。つまり、辞めるという選択肢は、休んだあとでも消えません。休職中に退職を決める人もいます。
退職後の生活が心配な人は、雇用保険の仕組みも知っておくと安心です。病気やけがなどで引き続き30日以上働けない場合は、基本手当の受給期間を申請によって延長できます[11]。また、体力の不足や心身の障害、疾病などによる自己都合の離職は、正当な理由のある「特定理由離職者」に当たる場合があります[12]。自分が当てはまるかは、離職後にハローワークで確認してください。
回復してから考えること
眠れるようになり、休日を楽しめる日が戻ってきたら、そこで初めて「この園で続けるか」「環境を変えるか」を考えます。回復したかどうかの目安は、気分のよい日が一日あったことではなく、朝起きる時間や食事の量が1〜2週間ほど安定しているかどうかです。焦って結論を出すと、体調がまた揺れたときに判断も揺れてしまいます。
考えはじめるときは、限界だった時期に書いたメモを読み返してください。「眠れなかったのは行事の前の月だけだった」「つらかったのは早番が週4回あった時期だった」というように、しんどさの原因が特定の役割や時期に集中していることが見えてくる場合があります。原因が絞れれば、今の園で調整を頼むのか、環境ごと変えるのかを選びやすくなります。何がいちばんつらかったのかを分けて考える方法や判断の軸は、保育士を辞めるべきか迷うときの判断基準で詳しく紹介しています。
06相談事例:休むと決めた日から変わったこと
要点:ここでは、限界のサインに気づいてから休み、回復したあとで働き方を見直したモデルケースを紹介します。どの順番で動いたかに注目してみてください。
「辞めたい」より先に「休みたい」と言えた
相談事例(モデルケース)
- お名前
- ことみさん(仮名)・34歳
- 保育士歴
- 12年目(相談当時)
- 勤務先
- 私立の認可保育園(定員約120名)、4歳児クラス担任と行事リーダー
- 変化
- 睡眠 1日4時間前後 → 6〜7時間/担当する行事 年4つ → 年1つ
編集部限界だと気づいたのは、どんなときでしたか。
運動会の1週間前に、午睡チェックの表を3日分まとめて書き忘れていたんです。12年やってきて、そんなこと一度もなかったのに。主任に指摘されて謝りながら、頭が真っ白でした。その夜は一睡もできなかったです。
編集部それでも、すぐには休まなかったそうですね。
行事リーダーの私が休んだら運動会が回らない、って本気で思い込んでいました。夫に「顔の色がおかしいよ」と言われて、やっと近くの心療内科に電話したんです。予約は2週間先で、正直、その2週間がいちばんきつかったですね。
編集部受診して、何が変わりましたか。
眠れない日が1か月以上続いていることと、出勤前に吐き気がすることを、スマホのメモを見ながら話しました。先生に「まず休みましょう」と言われた瞬間、ああ、休んでいいんだって。診察室を出たら涙が止まらなくて。園の就業規則に休職の定めがあったので、診断書を出して2か月休みました。
編集部復帰するとき、辞めることは考えませんでしたか。
考えました。でも、眠れるようになってから振り返ったら、嫌になっていたのは保育そのものじゃなくて、行事を年に4つも抱える働き方だったんです。それに気づけたのは、休んで頭が静かになったからだと思います。園長と話して、復帰後は行事リーダーを外れ、担当は年1つにしてもらいました。
限界のときの私には、辞めるか我慢するかの二つしか見えていませんでした。眠れるようになって、やっと三つ目の道が見えたんです。
ことみさん(仮名)
ことみさんは復帰から半年がたった今、4歳児クラスの副担任として働いています。早番と遅番はそれぞれ週2回までに調整してもらい、睡眠は6〜7時間とれる日がほとんどになりました。休日に友人と出かける余裕も戻ってきたそうです。
このケースで注目したいのは、ことみさんが「辞める」を最初の選択肢にしなかったことです。休んで回復してから考えたからこそ、つらさの原因が保育そのものではなく、役割の偏りにあると気づけました。もちろん、回復したうえで環境を変えるという結論になる人もいます。どちらの結論でも、判断は休んだあとで間に合います。
※相談で多く寄せられる状況をもとに再構成したモデルケースです。特定の個人ではなく、数値は一例です。
07限界を感じているときに、避けてほしいこと
要点:一つは、消耗しきった状態のまま大きな決断を急がないこと。もう一つは、この記事のサインに当てはまる数が少ないことを「まだ大丈夫」の根拠にしないことです。
1. 退職届を書くのは、眠れるようになってから
限界のときに退職届を書きたくなるのは自然なことです。ただ、退職届のような辞職の意思表示は、園に届いた時点で効力が生じ、原則として撤回できないとされています[13]。眠れない夜に勢いで出した書類は、あとから取り消せないかもしれません。
ただし、ハラスメントなど職場そのものが危険な場合は別です。その環境から離れること自体が回復の条件になるなら、早めに辞めるのも正当な選択です。その場合も、一人で決めずに、医師やハラスメントの相談先に状況を話してから動くと、手続きの面でも気持ちの面でも安全です。
2. 当てはまる数が少なくても、つらさは本物
この記事で紹介したサインは、病気かどうかを判断するためのものではありません。当てはまる数が一つでも、その一つがとても重いことがあります。我慢強い人ほど、サインに気づくのが遅れる傾向もあります。「まだ大丈夫」と思えるうちに、誰かに話しておくことが、いちばんの予防になります。
辞めるかどうかの話は、体と心が少し戻ってからで十分です。そのとき、今の園の何がしんどかったのかを保育の言葉のまま整理したくなったら、ほいくの相談室に話してみてください。転職するかどうかを決めていない段階でも、休み明けの働き方の相談から受けています。
よくある質問
自分が限界かどうか、よく分かりません。どう判断すればいいですか?
休日に休んでも気力が戻らない、眠れない日が2週間以上続いている、好きだったことに興味がわかない、のどれかがあれば、限界に近いサインと考えて受診や相談を検討してください。自分では判断がつかないときは、家族や友人に「最近の私、どう見える?」と聞いてみるのも手がかりになります。
心療内科に行くほどではない気がします。
迷っているなら、まずはかかりつけの内科で、眠れないことや食欲がないことを相談しても構いません。必要があれば専門の医療機関を紹介してもらえます。「行くほどではない」と感じる段階で相談しておくほうが、取れる手立ても多く残っています。
休むと同僚に迷惑がかかるので、休めません。
その気持ちは、周りを大切にしてきた証拠です。ただ、年次有給休暇は原則として働く人が指定した時季に取るもので、取得を理由とした不利益な扱いは禁止されています[8]。体調を崩して長く休むことになるほうが、結果として園への影響は大きくなります。
もう限界なので、明日から行かずに辞めてもいいですか?
期間の定めのない雇用なら、退職の申入れから2週間で雇用は終了します[10]。ただ、何も伝えずに出勤しなくなると、給与や書類の受け取りで困ることがあります。まず休む連絡をして受診し、そのうえで退職の意思を伝える順番にすると、心身の負担も手続きの負担も小さくなります。
休職中に転職活動をしてもいいですか?
就業規則の定めや休職の理由によって考え方が変わります。療養のための休職なら、まずは回復を優先し、医師と相談しながら動き出す時期を決めると安心です。回復の途中で面接を重ねると、疲れがぶり返すこともあります。
参考にした資料
- こころの耳「働く人の『こころの耳電話相談』」
- こころの耳「働く人の『こころの耳SNS相談』」
- こころの耳「働く人の『こころの耳メール相談』」
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」電話相談
- 確かめよう労働条件「ストレスチェックってな〜に?」
- こころの耳「ストレスチェック制度について(労働者数50人未満の事業場)」
- 確かめよう労働条件「年次有給休暇」
- 確かめよう労働条件「年次有給休暇」
- 確かめよう労働条件「労働条件相談ほっとライン」
- e-Gov法令検索「民法」
- ハローワーク「基本手当について」
- ハローワーク「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準」
- スタートアップ労働条件Q&A(厚生労働省)
※制度や数値は記事の更新時点で公的機関の資料により確認しています。最新の情報は各リンク先でご確認ください。